「友だち」は中国語で 朋友 と言い、二つの字にはそれぞれの来歴があります。友 は、最も古い銘文では、同じ向きにそろった二本の右手の形です ⟶ 助け合う二人です。朋 はもっと謎めいています。古文字学者はそこに二連の貝、つまり昔のお金を見ていますが、2世紀の初めに成った中国最初の字書は、数千羽の鳥を従えた鳳凰だとしていました。わたしは貝の説に傾いています(並んで垂れ下がる二本のひも、それだけでもう友情の姿です)が、確信はありません。昔の注釈家は、そもそもこの二つの語を区別していました。同门曰朋,同志曰友「同じ師についた者を 朋 といい、同じ志をもつ者を 友 という」。孔子の論語:第1章 のページにあるクヴルール(Couvreur)の訳は、ここから来ています。遠くから来る友は「知恵の友」、つまり弟子なのです。
爱 「愛する」は、漢字の簡略化このかた、さまざまに論じられてきました。繁体字の 愛 は、真ん中に「こころ」の 心 をもっています。簡体字はそれを失い、代わりに友だちの 友 が入りました。そこで何十年も前から、こんな冗談が出回っています。中国大陸では、心なしで愛する、ただし友だちどうしで。ご注意を、これはことば遊びです。この 友 は、爱 の中にあっても友情とは何の関係もなく、草書から来た略し方です。恋愛感情は 爱情 、恋人としての関係は 恋爱 と言い、この関係は「語る」ものです。谈恋爱 、文字どおりには「恋愛を語る」⟶ 付き合う。中国語では、恋に落ちるのではなく、恋を語るのです。
我爱你 は、あまり口にされません。子どもに一度も言ったことのない親は多く、カップルの多くも 我喜欢你「あなたが好き」のほうを選ぶか、何も言いません。愛情はしぐさで伝わるのです。むいてあげた果物、ごはんは食べたかという問いかけ。ところが、インターネット世代は抜け道を見つけました。520 と書くのです。五二零 は 我爱你 とほとんど同じように聞こえるので、5月20日は第二のバレンタインデーになりました。花を贈り、520元を象徴的に送金する日です。情人节 は、日本と同じく2月14日にも祝われます。中国ならではの祭りは、旧暦七月七日の夜です。七夕 、牽牛と織女の祭りで(日本の七夕と同じ伝説ですが、中国では恋人たちの日です)、中国のバレンタインデー のページで取り上げています。
出会いについては、訳しにくい語が二つあります。一见钟情 、ひと目ぼれは、文字どおりには「ひと目見て、思いを集める」です(钟 はここでは「集中させる」の意味です)。缘分 のほうが難しい語です。仏教から来たことばで、缘 は物事が起こる条件をさします。二人を出会わせる、わたしたちよりずっと前に結ばれたつながりです。同じ週に三度すれ違えば 有缘 と言い、誰が悪いわけでもなくうまくいかない恋には 没有缘分 と言います。「運命」では重すぎ、「偶然」では軽すぎます。日本語の「縁」がいちばん近いのでしょうが、わたしは中国語の語をそのまま使うよりよい手を見つけられませんでした。
嫉妬には、味があります。酢の味です。吃醋 「酢を食べる」は、五感 のページですでに出てきましたが、唐の時代にさかのぼるといわれます。太宗が大臣の 房玄龄 に側室を贈ろうとしたところ、大臣の妻が拒みました。そこで皇帝は、側室を受け入れるか、毒の杯をあおるかを選ばせました。妻は一息に飲み干しました。それは酢でした。美しい話です。おそらく美しすぎて本当ではないでしょう。それでも、手のつけられない焼きもち焼きをさす 醋坛子 「酢のかめ」ということばが残りました。
友だちのほうは、ことばがどんどん増えています。女の子どうしなら、闺蜜 がいます。闺 は昔の家の女性の部屋、蜜 は蜂蜜で、同じ発音の「親密」の 密 の代わりに入ったものです。東北地方では、男の子どうしが 老铁 「古い鉄」と呼び合います ⟶ 鉄のように固い友だち(このことばは、配信者が視聴者にこう呼びかけるライブ動画とともに、中国じゅうに広まりました)。古典のほうは、熱すぎる友情を警戒していました。荘子はこう書いています。君子之交淡若水,小人之交甘若醴、君子の交わりは淡きこと水のごとく、小人の交わりは甘きこと醴(あまざけ)のごとし。いまの言い方は 君子之交淡如水 で、後半は忘れられました。残念です。前半を説明しているのは、後半なのですから。
ネットのスラングは、独り身をさかんにからかいます。独り身の人は、自分のことを 单身狗 「独身の犬」と呼びます。カップルが仲のよさを見せつければ、撒狗粮 、その犬たちに「ドッグフードをまく」ことになります。そして、恋人どうしのあいだに座りつづける人は 电灯泡 、電球になります。明るく照らすのに、誰もそんなことは頼んでいません。不思議なことに、フランス語も同じイメージを選んでいて、tenir la chandelle(直訳「ろうそくを持つ」)と言います(日本語なら「お邪魔虫」でしょう)。たぶん偶然です。
それでも、会えない時間をうたった最も美しい詩句は、诗经 、つまり『詩経』にあります。ある歌が三つの連で言います。一日会わないと、三か月のよう。三度の秋のよう。三年のよう。ことわざの 一日不见,如隔三秋 に残ったのは、秋だけです(日本語の「一日千秋」も、ここから来ています)。では、三度の秋とはどれほどの長さでしょうか。注釈家の意見は分かれています。三年だという人もいれば、一つの季節は三か月だから九か月だという人もいます。わたしは決めません。待っている恋人は、それが長いことを知っています。
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使い方:どの語にもレベルがついています。① は基本、② はよく使うもの、③ は細かいもの。まず ① から始めてください。それだけでも、友だちのことや恋のことが話せます。▶ のボタンで発音が聞け、漢字をクリックすると筆順が開きます。
友だち
友だち、友人
仲のよい友だち、親しい友人
古くからの友人、旧友
友情、友好
ルームメイト;寮の同室者
友情(気持ちとしての)
(女性どうしの)親友、何でも話せる女友だち
何でも打ち明けられる友だち
親友;(SNSの)友だち、連絡先
ネット上の友だち;ネットユーザー
ペンフレンド、文通相手(直訳「筆の友」)
昔の同級生
仲間、相棒;パートナー
自分をよく理解してくれる親友(日本語の「知己」の「知り合い」の意味はない)
楽しいときだけの友だち(直訳「酒と肉の友」)
切っても切れない仲の親友、生死をともにする仲間
友だちとのつきあい
友だちをつくる
会う、顔を合わせる
おしゃべりする、雑談する
手伝う、手を貸す
付き添う、そばにいてあげる
気が合う
付き合う、交流する;(恋人として)交際する
日々をともに過ごす、ふだんつきあう
信頼する;信頼(日本語の「信任」より広い)
心からの、誠実な;まごころから
頼りになる、信頼できる
分かち合う、シェアする
秘密
(いまあるものを)大切にする
胸の内、本音
連絡を取り合う
腹を割って話す
友だちがいがある、真の友として振る舞う
再会する(長い別れのあとで)
絶交する、友だちと縁を切る
裏切る
恋に落ちる
愛する;愛
(二人のあいだの)愛、恋愛感情
ロマンチックな
愛し合う
初恋
好感、ひかれる気持ち
(誰かに)胸がときめく
ひと目ぼれ
ひそかに想いを寄せる
好きになる、恋に落ちる
(恋愛の相手に)アプローチする、口説く
縁(二人を出会わせる、見えないつながり)
ひきつける、魅了する(日本語の「吸引」とは別)
(相手を)気に入る、見初める
片思い(一方的な恋)
(話のきっかけに)声をかける、ナンパする
(関係が)あいまいな、友だち以上恋人未満の
付き合う
彼氏、ボーイフレンド
彼女、ガールフレンド
デート;デートする
付き合う、恋愛をする
一緒にいる(カップルとして)
抱きしめる;抱擁
カップル、恋人どうし
告白する、想いを打ち明ける
恋愛、恋人としての関係
恋人
交際相手、付き合っている人(日本語の「対象」とは別)
手をつなぐ
キスする(口に)
ラブレター
(恋愛で)一途な、浮気しない
チュッとキスする
熱烈に恋している;付き合いはじめの燃えるような恋
遠距離恋愛
ネット恋愛
甘いことば
愛してる
ねえ、あなた(恋人への呼びかけ);親愛なる
(会えない人を)恋しく思う
ハニー、ベイビー(恋人や子どもへの愛称)
甘い、幸せいっぱいの(恋、ひととき)
真実の愛、本物の愛
伴侶、ベターハーフ
思いやりのある、気配りのきく
意中の人、想い人
夢に見る理想の恋人(中国語の「情人」は恋人の意味)
愛のささやき
恋が終わるとき
(恋人と)別れる
離れる;離ればなれになる
失恋する;失恋
元彼(男性の元恋人)
元カノ(女性の元恋人)
(恋人を)振る(くだけた言い方)
胸が張り裂ける、傷心の
憎む、恨む
寂しい、孤独を感じる
浮気っぽい、移り気な
焼きもち焼き(直訳「酢のかめ」)
浮気する、ほかの人と付き合う(直訳「開脚する」)
二股をかける(直訳「二艘の船に片足ずつ乗せる」)
よりを戻す
恋敵、恋のライバル
(SNSで相手を)ブロックする
成語とことわざに見る友情と恋愛
一日会わなければ、三度の秋を隔てたよう(一日千秋)
恋する者の目には相手が西施に見える(西施は古代随一の美女)、あばたもえくぼ
愛し合う者は、ついには結ばれる
家を愛すれば、屋根のカラスまで愛する(屋烏の愛)
悪い仲間、悪友(直訳「狐の友と犬の友」)
永遠の愛の誓い(直訳「海と山にかけた誓い」)
天地のように永遠に
君子の交わりは淡きこと水のごとし
苦しいときにこそ真の友がわかる
真の友と飲めば、千杯でも足りない
家では親を頼り、外に出れば友を頼る
恋人を友だちより優先する
日常のことばに見る友情と恋愛
バレンタインデー
交友の輪;WeChat の「モーメンツ」
思いやり、慈愛(爱心座位:優先席)
大切に守る、いたわる
愛国的な;国を愛する
「お客さま」(ネット通販の店員の呼びかけ)
ダチ、相棒(東北地方の俗語、ライブ配信で広まった)
独り身(自嘲をこめた俗語、直訳「独身の犬」)
独り身を卒業する、恋人ができる
のろけを見せつける(直訳「独り身にドッグフードをまく」)
人前で仲のよさをアピールする
恋をすると何も見えなくなる(俗語)
お邪魔虫(直訳「電球」)
例文
彼はわたしのいちばんの親友です。
週末は、よく友だちとお茶を飲みながらおしゃべりします。
彼女はいるの?
わたしたちは大学で知り合いました。
あの二人は付き合って三年になります。
今夜はデートがあるんです。
彼女は先月、彼氏と別れました。
ねえ、会いたいよ。
わたしたちは二十年以上の付き合いになる古い友だちです。
手伝いが必要なら、ひと声かけてくれればいいよ。
ルームメイトとはとても気が合って、何でも分け合っています。
彼は彼女をはじめて見たとき、ひと目ぼれしました。
彼女のことを二年間ひそかに想っているけれど、告白する勇気がどうしても出ません。
初恋の人のこと、まだ覚えてる?
わたしたちが出会えたのは、本当にご縁だね。
あの人はとても浮気っぽいから、気をつけて。
別れたあと、彼女は長いあいだ立ち直れませんでした。
週末になると、二人はよく手をつないで公園を散歩します。
本当の友だちとは、いちばんつらいときにもそばにいてくれる人のことです。
彼は彼女とデートなんだ。お邪魔虫になりに行く気はないよ。
5月20日はネット上のバレンタインデーです。520 の読み「ウー・アル・リン」が、中国語の「愛してる」に似て聞こえるからです。
彼氏が二股をかけていると知ると、彼女はすぐに彼をブロックしました。
恋は盲目。彼の目には、彼女が世界でいちばん美しい人なのです。
苦しいときの友こそ真の友。わたしが病気のとき、毎日見舞いに来てくれたのは彼だけでした。
朋あり遠方より来たる、また楽しからずや。


