人口は 人口 といい、文字どおりには「人の口」です。人を、食べさせなければならない口の数で数えるわけで、この語はごくありふれた質問にまで顔を出します。你家有几口人? 、「お宅には口がいくつありますか?」。ここでは 口 が助数詞の役目をしています。日本語でも「人口」とは言いますが、家族を口で数えることはしません。ほかにこんなふうに身内を数える言語を、私は知りません(反論はいつでも歓迎します)。
社会、社会 の歴史はもっと入り組んでいます。社 は土地の神をまつる祭壇、会 はその祭壇のまわりに集まる村人の寄り合いでした ⟶ 村祭りです。ところが「society」という意味は日本から来ました。明治時代に日本がこの古い漢語を英語の society の訳語に当て、中国は二十世紀の初めにそれを取り込んだのです。つまり、いまの中国語の 社会 は、日本語の「社会」そのものです。少子化 、子どもが減っていくことも、ずっと最近になって同じ道をたどりました。
人口が多いことを、孔子は喜びました。衛の国に着いたとき、孔子は 庶矣哉 、「人が多いなあ!」と声を上げ、弟子は、その次に何をすべきかと尋ねます。答えは、豊かにし、それから教えること(例文25、孔子の論語 第13章、XIII.9 を参照)。老子が夢見たのはその逆で、民の少ない小さな国、よそへ移り住もうとさえ思わない国でした(例文24、老子(道徳経)第八十章 を参照)。中国の歴史は、どちらかといえば孔子のほうについていきました。
産児制限は 计划生育 、文字どおりには「計画された出産」です。一人っ子政策は1980年から強制され、2016年に二人っ子、2021年には三人っ子、三胎 へと移りました。胎 は胎児のことです ⟶ 子どもを妊娠の回数で数えるのです。その間に、男の子を好む古い考え、重男轻女 、「男は重く、女は軽い」が男女の比率を狂わせ、何百万もの男性が 光棍 、「裸の棒」のまま終わることになります。葉も実もない枝、子孫を残さない枝だといわれます。むごいたとえです。
今では問題が逆転しました。出生率は急落し、国は老いていきます(例文11と19、年齢と人生 も参照)。ことわざの 养儿防老 、「息子を育てて老いに備える」も、たった一人の子が両親二人と祖父母四人を支えなければならないとなると、なかなか成り立ちません。
中国では、だれもが戸籍、つまり 户口 によって出身地に結びつけられています(街とその界隈 を参照)。よその土地で暮らす人々は 流动人口 、「流れる人口」と呼ばれ、2020年の人口センサスではおよそ3億8000万人にのぼりました。毎年、旧正月の前になると、その人たちがほとんどいっせいに故郷へ帰ります(例文12)。水のイメージは 北漂 、「北京を漂う」にもあらわれます ⟶ 北京に暮らしながら、いつまでも根を下ろさないことです(例文20)。
遠くへ出ていくのは、昔からの習いです。山東の農民は 闯关东 、「関の東へ突き進む」(万里の長城の端にある山海関のことです)で満洲へ、山西の人々は 走西口 、「西の関を越える」でモンゴルへ、福建と広東の人々は 下南洋 、「南の海へ下る」で旅立ちました(例文21)。彼らの村は 侨乡 となり、広東省の開平では、移民たちがアメリカで稼いだお金で建てさせた砦のような塔を、いまも見て回ることができます。
ボランティアは 义工 といいます。义 は正しいこと、そこから転じて、みんなのために無償でおこなうことです(义卖、チャリティーバザー)。献身の公式の手本は、いまも 雷锋 。1962年に亡くなった兵士で、翌年、毛沢東が人々の模範として掲げました。3月5日には「雷鋒に学ぶ」のです(例文15)。ただしこの名前は、人助けを少し見せびらかしすぎる人に向けて、皮肉まじりに使われることもあります。
衛生、卫生 は「生命を守る」ことです。愛国衛生運動は1952年に始まり、1958年には 除四害 、四つの害を除く、つまりネズミ、ハエ、蚊、スズメを退治しなければなりませんでした。念のため言っておくと、スズメは1960年にリストから外され、南京虫に置き換えられました。スズメがいないと虫が大発生することに気づいたからです。随地吐痰 、所かまわず痰を吐くことへの戦いは、もっと長くかかりました(例文23)。
社会は俗語にも入り込んでいます。知らない人を怖がる内気な人は 社恐 、「社交恐怖症」の略です。その反対で、だれにでも話しかけられる人は 社牛 (略さない形は、あまり上品ではないので勘弁してください)。そして列に割り込む人がいると、あの人には 素质 、品位がない、と言います。中国語でいちばん礼儀正しい悪口です。
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人口とその数字
社会
増える、伸びる;増加、成長
減る、減少する
人口調査、国勢調査
人口が多いこと
一人当たり
平均寿命、「平均の寿命」
出生率
男女比
死亡率
合計特殊出生率
男性が多く女性が少ないこと
人口ボーナス、「人口の配当」
ベビーブーム、「赤ん坊の潮」
生まれること、老いること
高齢者を扶養する;老後を過ごす
子どもをもうける;出産
産児制限、「計画された出産」
新生児
独身の男、「裸の棒」
労働力、労働人口
男の子を女の子より重んじる
第三子;三人っ子政策(2021年)
少子化(日本語から入った語)
老人が暮らしに困らないこと
息子を育てて老後に備える
子が多ければ福も多い
家系を継ぐ、跡継ぎを残す
農村から都市へ
ホームシックになる、家を恋しがる
適応する、慣れる
田舎の人、田舎者
よその土地、故郷を離れた地
よそから来た人口
都市と農村の格差
流動人口(国内の移住者)
異郷(書きことば)
出稼ぎ労働者の波
「北京の漂流者」、北京で一旗揚げようとする若者
さすらう、放浪する
満洲へ一旗揚げに行く(19〜20世紀)
長城を越えてモンゴル方面へ働きに出る
移住と海外での暮らし
移住する;移民、移住者
定住する、住みつく
よそへ移り住む、国外へ移る
新しい移民
海外の中国系の人々、華僑・華人
溶け込む、なじむ
カルチャーショック
不法移民;不法移民者
密航する、不法に国境を越える
難民キャンプ
南洋(東南アジア)へ渡る
華僑のふるさと
助け合いとボランティア
助ける;手助け、援助
寄付する;寄付金
善い行いをする
親切な人、善意の人
親身な、熱心な
慈善
献血する
協会
公益、公共の利益
ボランティア;ボランティア活動
善意を示す、「愛を捧げる」
赤十字社
雷鋒に学ぶ、人のために尽くす
希望プロジェクト(貧しい農村の学校支援、1989年から)
貧しい地域へ教えに行く
非政府組織(NGO)
社会問題
貧しい;貧しさ
貧しい人々
金持ち
差別する;差別
男女平等
社会問題
貧困、困窮
貧富の格差
住む家がない、「帰るべき家がない」
浮浪者、ホームレス
麻薬を使う
賭け事をする;賭博
社会的弱者
家庭内暴力、DV
医療の受けにくさ、「診てもらうのが難しい」
金持ちの子、「富める二代目」
公衆衛生と衛生習慣
衛生に気をつける、清潔にする
公衆トイレ
たばこを吸う
感染症
予防する;予防
隔離する;隔離
新型コロナ、「新しい冠」
公衆衛生
世界保健機関(WHO)
地面に痰を吐く
SARS(2003年)、「非定型肺炎」
PCR検査、「核酸検査」
健康コード(コロナ禍のQRコード)
愛国衛生運動(1952年から)
四害を駆除する(ネズミ、ハエ、蚊、スズメ)
助け合いの成語とことわざ
人が多ければ力も大きい
団結は力なり
人助けを喜びとする
万人が心を一つにする
満員、「人の多さが災いとなる」
一か所が災難に遭えば、四方八方から助けが来る
互いに見守り、助け合う
危うい人を救い、困っている人を助ける
善行を好み、施しを惜しまない
人にバラを贈れば、手に香りが残る
人は高みを目指し、水は低きに流れる
木は移せば枯れ、人は動けば生きる道が開ける
金のある者は金を出し、力のある者は力を出す
一人はみんなのために、みんなは一人のために
日常のことばに見る群衆と公共
だれもが、一人ひとり
公共の
人混み、群衆
大衆
公共の場所
社交、人づきあい
品位、教養(人の)
秩序(公共の)
公衆、一般の人々
公衆道徳、公徳心
人づきあいが苦手、「社交恐怖症」(くだけた言い方)
だれとでも打ち解ける、「社交の猛者」(くだけた言い方)
例文
中国はとても人口が多く、14億人を抱えている。
この町の人口は毎年増えている。
彼は5年前に故郷を離れ、よくホームシックになる。
祖父は若いころフランスに移住した。
地震のあと、多くの人が被災地のために寄付をした。
彼女は毎週末、老人ホームでボランティアをしている。
みんな、ご飯の前には手を洗おうね。衛生は大事だよ!
公共の場所での喫煙は禁止されている。
中国は10年ごとに人口調査を行う。
産児制限のため、多くの家庭は子どもが一人だけだった。
子どもを望まない若者が増え、出生率は下がり続けている。
春節の前になると、都会で働く人たちはみな故郷に帰って年を越す。
外国に着いたばかりのころ、彼はそこでの暮らしになかなかなじめなかった。
学校は生徒たちを老人ホームに連れていき、善意を届けた。
3月5日は「雷鋒に学ぶ」日だ。
採用にあたって、性別による差別は一切許されない。
大都市にさえ、ホームレスは少なくない。
咳をするときは口をおおって、ほかの人にうつさないようにしよう。
中国は高齢化社会に入り、高齢者の扶養が大きな問題になっている。
多くの若者が北京へ「漂い」に行き、それが十年続くこともある。
清末、福建と広東の多くの人々が南洋へ渡って生計を立てた。
地震のあと、全国が被災地の救援に動き、各地からボランティアが駆けつけた。
昔は所かまわず痰を吐く人が多かったが、今ではずっと少なくなった。
(私が治めるなら)小さな国に少ない民、民には死を恐れることを教え、遠くへ移り住まないようにさせる。(『老子』80)
「人が多いなあ!」「人が多くなったら、さらに何をしてやればよいでしょうか。」「豊かにしてやることだ。」「豊かになったら、さらに何をしてやればよいでしょうか。」「教えることだ。」(孔子、『論語』XIII.9)


