中山経(中山经 Zhōngshānjīng)は三ページに分けて収められ、ここで完結する。この最終部分では、中次十一经 と 中次十二经 の二つの山系(漢水および洞庭湖の一帯)を扱い、続いて大禹の言葉を伴う五蔵山経の総括の跋文(五藏山经)を収める。洞庭山では帝の二女に出会う。漢文の原文にピンイン転写を添え、その後に日本語訳と注を付す。
中央山経 第十一 — 中次十一经(Jingshan の山系)
《中次一十一山經》荊山之首,曰翼望之山。湍水出焉,東流注于濟。貺水出焉,東南流注于漢,其中多蛟。其上多松柏,其下多漆梓,其陽多赤金,其陰多珉。
中央山経の第十一、Jingshan の山系である。その筆頭の山は Yiwang 山(翼望)という。Tuan 川(湍水)がここから流れ出て東へ流れ、Ji 水(濟)に注ぐ。Kuang 川(貺水)がここから流れ出て東南へ流れ、Han 水(漢)に注ぐ。蛟(みずち、蛟)が多い。山頂には松や柏が多く、山麓には漆や梓が多い。南斜面には赤金が多く、北斜面には碧玉(min、珉)が多い。
又東北一百五十里,曰朝歌之山。潕水出焉,東南流注于榮,其中多人魚。其上多梓柟,其獸多麢麋。有草焉,名曰莽草,可以毒魚。
東北へ百五十里のところに、Zhaoge 山(朝歌)がある。Wu 川(潕水)がここから流れ出て東南へ流れ、Rong 水(榮)に注ぐ。サンショウウオが多い。山頂には梓や楠が多く、獣は羚羊(カモシカ)や麋鹿が多い。ここに mangcao(莽草)という草があり、これを用いて魚を毒殺する。
又東南二百里,曰帝囷之山,其陽多㻬琈之玉,其陰多鐵。帝囷之水出于其上,潛于其下,多鳴蛇。
東南へ二百里のところに、Diqun 山(帝囷)がある。南斜面には tufu の玉が多く、北斜面には鉄が多い。Diqun 川(帝囷水)が山頂に湧き出て山麓で地中に消える。鳴蛇(mingshe、鳴蛇)が多い。
又東南五十里,曰視山,其上多韭。有井焉,名曰天井,夏有水,冬竭。其上多桑,多美堊、金玉。
東南へ五十里のところに、Shi 山(視山)がある。山頂にはニラが多い。ここに「天井」(Tianjing、天井)と呼ばれる井戸があり、夏には水があるが冬には涸れる。山頂には桑、良質の白堊、金、玉が多い。
又東南二百里,曰前山,其木多櫧,多柏,其陽多金,其陰多赭。
東南へ二百里のところに、Qian 山(前山)がある。樹木は主に zhu 樫(櫧)と柏。南斜面には金が多く、北斜面には赭が多い。
又東南三百里,曰豐山。有獸焉,其狀如蝯,赤目、赤喙、黃身,名曰雍和,見則國有大恐。神耕父處之,常遊清泠之淵,出入有光,見則其國為敗。有九鐘焉,是知霜鳴。其上多金,其下多穀柞杻橿。
東南へ三百里のところに、Feng 山(豐山)がある。ここに猿に似て、目が赤く、嘴が赤く、体が黄色い獣がいて、yonghe(雍和)という。これが現れると、その地は大いに恐慌をきたす。神の Gengfu(耕父)がここに住まう。つねに清冷の淵(Qingleng、清泠)に遊び、出入りするときに光を放ち、これが現れると、その地は荒廃に向かう。ここには九つの鐘があり、霜が降りると鳴り響く。山頂には金が多く、山麓には楮、樫、niu、jiang が多い。
又東北八百里,曰兔床之山,其陽多鐵,其木多藷藇,其草多雞穀,其本如雞卵,其味酸甘,食者利於人。
東北へ八百里のところに、Tuchuang 山(兔床)がある。南斜面には鉄が多い。樹木は主に山芋(shuyu、藷藇)、草は主に jigu(雞穀)で、その根は鶏卵に似て、甘酸っぱい味がする。これを食べる者は益を得る。
又東六十里,曰皮山,多堊,多赭,其木多松柏。
東へ六十里のところに、Pi 山(皮山)がある。白堊と赭が多く、樹木は主に松と柏。
又東六十里,曰瑤碧之山,其木多梓柟,其陰多青䨼,其陽多白金。有鳥焉,其狀如雉,恒食蜚,名曰鴆。
東へ六十里のところに、Yaobi 山(瑤碧)がある。樹木は主に梓と楠。北斜面には青い鉱石が多く、南斜面には銀が多い。ここに雉に似た鳥がいて、つねに fei(蜚)という虫を食べ、zhen(鴆)という。
又東四十里,曰支離之山,濟水出焉,南流注于漢。有鳥焉,其名曰嬰勺,其狀如鵲,赤目、赤喙、白身,其尾若勺,其鳴自呼。多㸲牛,多羬羊。
東へ四十里のところに、Zhili 山(支離)がある。Ji 川(濟水)がここから流れ出て南へ流れ、Han 水に注ぐ。ここに yingshao(嬰勺)という鳥がいて、鵲(かささぎ)に似て、目が赤く、嘴が赤く、体が白く、尾が匙の形をしている。その鳴き声は自らの名を告げる。zuoniu と qianyang が多い。
又東北五十里,曰祑𥮐之山,其上多松柏机柏。
東北へ五十里のところに、Zhikou 山(祑𥮐)がある。山頂には松、柏、ji(机)の木が多い。
又西北一百里,曰堇理之山,其上多松柏,多美梓,其陰多丹䨼,多金,其獸多豹虎。有鳥焉,其狀如鵲,青身白喙,白目白尾,名曰青耕,可以禦疫,其鳴自叫。
西北へ百里のところに、Jinli 山(堇理)がある。山頂には松、柏、良質の梓が多く、北斜面には辰砂(dan、丹䨼)と金が多い。獣は主に豹と虎。ここに鵲に似て、体が青緑色で嘴が白く、目が白く、尾が白い鳥がいて、qinggeng(青耕)という。これは疫病から守り、その鳴き声は自らの名を告げる。
又東南三十里,曰依軲之山,其上多杻橿,多苴。有獸焉,其狀如犬,虎爪有甲,其名曰獜,善駚𤘝,食者不風。
東南へ三十里のところに、Yigu 山(依軲)がある。山頂には niu、jiang、麻(ju、苴)が多い。ここに犬に似て、虎の爪をもち、鱗に覆われた獣がいて、lin(獜)という。跳ねたり転げたりするのを好む。これを食べる者は風の病にかからない。
又東南三十五里,曰即谷之山,多美玉,多玄豹,多閭麈,多麢㚟。其陽多珉,其陰多青䨼。
東南へ三十五里のところに、Jigu 山(即谷)がある。良質の玉、黒い豹、lü 鹿や zhu 鹿、羚羊や chuo が多い。南斜面には碧玉(min、珉)が多く、北斜面には青い鉱石が多い。
又東南四十里,曰鷄山,其上多美梓,多桑,其草多韭。
東南へ四十里のところに、Ji 山(鷄山)がある。山頂には良質の梓と桑が多く、草は主にニラ。
又東南五十里,曰高前之山。其上有水焉,甚寒而清,帝臺之漿也,飲之者不心痛。其上有金,其下有赭。
東南へ五十里のところに、Gaoqian 山(高前)がある。その山頂には、きわめて冷たく澄んだ水が湧き出る。これが「太帝の飲み水」であり、これを飲む者は心の病にかからない。山頂には金があり、山麓には赭がある。
又東南三十里,曰游戲之山,多杻橿穀,多玉、多封石。
東南へ三十里のところに、Youxi 山(游戲)がある。niu、jiang、楮が多く、玉と feng 石(封石)が多い。
又東南三十五里,曰從山,其上多松柏,其下多竹。從水出于其上,潛于其下,其中多三足鱉,枝尾,食之無蠱疫。
東南へ三十五里のところに、Cong 山(從山)がある。山頂には松と柏が多く、山麓には竹が多い。Cong 川(從水)が山頂に湧き出て山麓で地中に消える。三本足で尾の分かれたスッポンが多く、これを食べる者は邪気や疫病を免れる。
又東南三十里,曰嬰䃌之山,其上多松柏,其下多梓椿。
東南へ三十里のところに、Yingping 山(嬰䃌)がある。山頂には松と柏が多く、山麓には梓や樗(chun、椿)が多い。
又東南三十里,曰畢山。帝苑之水出焉,東北流注于視,其中多水玉,多蛟,其上多㻬琈之玉。
東南へ三十里のところに、Bi 山(畢山)がある。Diyuan 川(帝苑水)がここから流れ出て東北へ流れ、Shi 水(視)に注ぐ。水晶と蛟(みずち)が多く、山頂には tufu の玉が多い。
又東南二十里,曰樂馬之山。有獸焉,其狀如彙,赤如丹火,其名曰𤟑,見則其國大疫。
東南へ二十里のところに、Lema 山(樂馬)がある。ここに針鼠(hui、彙)に似て、辰砂の火のように赤い獣がいて、hui(𤟑)という。これが現れると、その地は大いに疫病に見舞われる。
又東南二十五里,曰葴山,視水出焉,東南流注于汝水,其中多人魚,多蛟,多頡。
東南へ二十五里のところに、Zhen 山(葴山)がある。Shi 川(視水)がここから流れ出て東南へ流れ、Ru 水(汝水)に注ぐ。サンショウウオ、蛟(みずち)、xie というカワウソ(頡)が多い。
又東四十里,曰嬰山,其下多青䨼,其上多金玉。
東へ四十里のところに、Ying 山(嬰山)がある。山麓には青い鉱石が多く、山頂には金と玉が多い。
又東三十里,曰虎首之山,多苴椆椐。
東へ三十里のところに、Hushou 山(虎首)がある。麻(ju、苴)、chou(椆)、ju(椐)が多い。
又東二十里,曰嬰侯之山,其上多封石,其下多赤錫。
東へ二十里のところに、Yinghou 山(嬰侯)がある。山頂には feng 石が多く、山麓には赤い錫が多い。
又東五十里,曰大孰之山。殺水出焉,東北流注于視水,其中多白堊。
東へ五十里のところに、Dashu 山(大孰)がある。Sha 川(殺水)がここから流れ出て東北へ流れ、Shi 水に注ぐ。白い白堊が多い。
又東四十里,曰卑山,其上多桃李苴梓,多纍。
東へ四十里のところに、Bei 山(卑山)がある。山頂には桃、李、麻、梓が多く、藤(lei、纍)が多い。
又東三十里,曰倚帝之山,其上多玉,其下多金。有獸焉,其狀如鼣鼠,白耳白喙,名曰狙如,見則其國有大兵。
東へ三十里のところに、Yidi 山(倚帝)がある。山頂には玉が多く、山麓には金が多い。ここに fei という鼠(鼣鼠)に似て、耳が白く嘴が白い獣がいて、juru(狙如)という。これが現れると、その地は大きな戦乱に見舞われる。
又東三十里,曰鯢山,鯢水出于其上,潛于其下,其中多美堊。其上多金,其下多青䨼。
東へ三十里のところに、Ni 山(鯢山)がある。Ni 川(鯢水)が山頂に湧き出て山麓で地中に消える。良質の白堊が多い。山頂には金が多く、山麓には青い鉱石が多い。
又東三十里,曰雅山。灃水出焉,東流注于視水,其中多大魚。其上多美桑,其下多苴,多赤金。
東へ三十里のところに、Ya 山(雅山)がある。Feng 川(灃水)がここから流れ出て東へ流れ、Shi 水に注ぐ。大きな魚が多い。山頂には良質の桑が多く、山麓には麻と赤金が多い。
又東五十里,曰宣山。淪水出焉,東南流注于視水,其中多蛟。其上有桑焉,大五十尺,其枝四衢,其葉大尺餘,赤理黃華青柎,名曰帝女之桑。
東へ五十里のところに、Xuan 山(宣山)がある。Lun 川(淪水)がここから流れ出て東南へ流れ、Shi 水に注ぐ。蛟(みずち)が多い。その山頂には高さ五十尺の桑が生え、枝は四つに分かれ、葉は一尺あまり、葉脈は赤く、花は黄色く、萼は青緑色で、「帝の娘の桑」(Dìnǚ zhī sāng、帝女之桑)という。
又東四十五里,曰衡山,其上多青䨼,多桑,其鳥多鸜鵒。
東へ四十五里のところに、Heng 山(衡山)がある。山頂には青い鉱石と桑が多く、鳥は主に八哥(quyu、鸜鵒)。
又東四十里,曰豐山,其上多封石,其木多桑,多羊桃,狀如桃而方莖,可以為皮張。
東へ四十里のところに、Feng 山(豐山)がある。山頂には feng 石が多く、樹木は主に桑と yangtao(羊桃、マタタビの類)で、桃に似ているが茎が四角い。これを用いて皮膚の腫れを治す。
又東七十里,曰嫗山,其上多美玉,其下多金,其草多雞穀。
東へ七十里のところに、Yu 山(嫗山)がある。山頂には良質の玉が多く、山麓には金が多く、草は主に jigu(雞穀)。
又東三十里,曰鮮山,其木多楢杻苴,其草多𧄸冬,其陽多金,其陰多鐵。有獸焉,其狀如膜大,赤喙、赤目、白尾,見則其邑有火,名曰𤝻即。
東へ三十里のところに、Xian 山(鮮山)がある。樹木は主に you 樫、niu、麻。草は主に mendong(𧄸冬)。南斜面には金が多く、北斜面には鉄が多い。ここに mò(膜、野犬)に似て、嘴が赤く、目が赤く、尾が白い獣がいて、これが現れるとその地は火事に見舞われる。liji(𤝻即)という。
又東三十里,曰章山,其陽多金,其陰多美石。皋水出焉,東流注于澧水,其中多脆石。
東へ三十里のところに、Zhang 山(章山)がある。南斜面には金が多く、北斜面には良質の石が多い。Gao 川(皋水)がここから流れ出て東へ流れ、Feng 水(澧水)に注ぐ。もろい石(cuishi、脆石)が多い。
又東二十五里,曰大支之山,其陽多金,其木多穀柞,無草木。
東へ二十五里のところに、Dazhi 山(大支)がある。南斜面には金が多く、樹木は主に楮と樫。ほかに草はない。
又東五十里,曰區吳之山,其木多苴。
東へ五十里のところに、Quwu 山(區吳)がある。樹木は主に麻(ju、苴)。
又東五十里,曰聲匈之山,其木多穀,多玉,上多封石。
東へ五十里のところに、Shengxiong 山(聲匈)がある。樹木は主に楮。玉が多く、山頂には feng 石が多い。
又東五十里,曰大騩之山,其陽多赤金,其陰多砥石。
東へ五十里のところに、Dagui 山(大騩)がある。南斜面には赤金が多く、北斜面には砥石(dishi、砥石)が多い。
又東十里,曰踵臼之山,無草木。
東へ十里のところに、Zhongjiu 山(踵臼)がある。草木がない。
又東北七十里,曰歷石之山,其木多荊芑,其陽多黃金,其陰多砥石。有獸焉,其狀如狸,而白首虎爪,名曰梁渠,見則其國有大兵。
東北へ七十里のところに、Lishi 山(歷石)がある。樹木は主に jing と qi の灌木。南斜面には金が多く、北斜面には砥石が多い。ここに山猫に似て、頭が白く、虎の爪をもつ獣がいて、liangqu(梁渠)という。これが現れると、その地は大きな戦乱に見舞われる。
又東南一百里,曰求山。求水出于其上,潛于其下,中有美赭。其木多苴,多䉋。其陽多金,其陰多鐵。
東南へ百里のところに、Qiu 山(求山)がある。Qiu 川(求水)が山頂に湧き出て山麓で地中に消える。良質の赭を含む。樹木は主に麻と mei 竹(䉋)。南斜面には金が多く、北斜面には鉄が多い。
又東二百里,曰丑陽之山,其上多椆椐。有鳥焉,其狀如烏而赤足,名曰𩢢餘,可以禦火。
東へ二百里のところに、Chouyang 山(丑陽)がある。山頂には chou(椆)と ju(椐)が多い。ここに烏に似て脚が赤い鳥がいて、wenyu(𩢢餘)という。これは火から守る。
又東三百里,曰奧山,其上多柏杻橿,其陽多㻬琈之玉。奧水出焉,東流注于視水。
東へ三百里のところに、Ao 山(奧山)がある。山頂には柏、niu、jiang が多く、南斜面には tufu の玉が多い。Ao 川(奧水)がここから流れ出て東へ流れ、Shi 水に注ぐ。
又東三十五里,曰服山,其木多苴,其上多封石,其下多赤錫。
東へ三十五里のところに、Fu 山(服山)がある。樹木は主に麻。山頂には feng 石が多く、山麓には赤い錫が多い。
又東三百里,曰杳山,其上多嘉榮草,多金玉。
東へ三百里のところに、Yao 山(杳山)がある。山頂には jiarong(嘉榮草)という草、金、玉が多い。
又東三百五十里,曰几山,其木多楢檀杻,其草多香。有獸焉,其狀如彘,黃身、白頭、白尾,名曰聞𧲂,見則天下大風。
東へ三百五十里のところに、Ji 山(几山)がある。樹木は主に you 樫、白檀、niu。草は主に香草。ここに豚に似て、体が黄色く、頭が白く、尾が白い獣がいて、wenlin(聞𧲂)という。これが現れると、天下は大風に見舞われる。
凡荊山之首,自翼望之山至于几山,凡四十八山,三千七百三十二里。其神狀皆彘身人首。其祠:毛用一雄雞祈,瘞用一珪,糈用五種之精。禾山,帝也,其祠:太牢之具,羞瘞,倒毛;用一璧,牛無常。堵山、玉山,冢也,皆倒祠,羞毛少牢,嬰毛吉玉。
総じて、Yiwang 山から Ji 山まで、Jingshan の山系は四十八の山、三千七百三十二里にわたる。その神々はいずれも豚の体に人の頭をもつ。その祭祀には、一羽の雄鶏を供えて祈願し、一枚の玉圭(gui、珪)を埋め、聖なる穀物として五穀の精をもちいる。He 山は「帝神」であり、その祭祀には太牢の供物一式をもちい、供物を献じて埋め、犠牲を伏せ、玉璧を添え、決まった牛を用いない。Du 山と Yu 山は聖なる丘であり、犠牲を伏せて祭り、少牢を献じ、吉祥の玉を懸ける。
中央山経 第十二 — 中次十二经(Dongting の山系)
《中次十二經》洞庭山之首,曰篇遇之山,無草木,多黃金。
中央山経の第十二、Dongting の山系である。その筆頭の山は Pianyu 山(篇遇)といい、草木がなく、金が多い。
又東南五十里,曰雲山,無草木。有桂竹,甚毒,傷人必死。其上多黃金,其下多㻬琈之玉。
東南へ五十里のところに、Yun 山(雲山)があり、草木がない。ここに桂竹(guizhu、桂竹)があり、きわめて毒が強く、これで傷ついた者は必ず死ぬ。山頂には金が多く、山麓には tufu の玉が多い。
又東南一百三十里,曰龜山,其木多穀柞椆椐,其上多黃金,其下多青雄黃,多扶竹。
東南へ百三十里のところに、Gui 山(龜山)がある。樹木は主に楮、樫、chou、ju。山頂には金が多く、山麓には青い雄黄と fu 竹(扶竹)が多い。
又東七十里,曰丙山,多筀竹,多黃金銅鐵,無木。
東へ七十里のところに、Bing 山(丙山)がある。gui 竹(筀竹)、金、銅、鉄が多く、樹木はない。
又東南五十里,曰風伯之山,其上多金玉,其下多痠石、文石,多鐵,其木多柳杻檀楮。其東有林焉,名曰莽浮之林,多美木鳥獸。
東南へ五十里のところに、Fengbo 山(風伯)がある。山頂には金と玉が多く、山麓には suan 石(痠石)、文石、鉄が多い。樹木は主に柳、niu、白檀、楮。東には Mangfu(莽浮)という林があり、美しい樹木、鳥、獣に富む。
又東一百五十里,曰夫夫之山,其上多黃金,其下多青雄黃,其木多桑楮,其草多竹、雞鼓。神于兒居之,其狀人身而身操兩蛇,常遊于江淵,出入有光。
東へ百五十里のところに、Fufu 山(夫夫)がある。山頂には金が多く、山麓には青い雄黄が多い。樹木は主に桑と楮、草は主に竹と jigu(雞鼓)。神の Yu'er(于兒)がここに住まう。人の体をもち、二匹の蛇を体に巻きつけ、つねに大河の淵に遊び、出入りするときに光を放つ。
又東南一百二十里,曰洞庭之山,其上多黃金,其下多銀鐵,其木多柤棃橘櫾,其草多葌蘪蕪芍藥芎藭。帝之二女居之,是常遊于江淵,澧沅之風,交瀟湘之淵,是在九江之間,出入必以飄風暴雨。是多怪神,狀如人而載蛇,左右手操蛇。多怪鳥。
東南へ百二十里のところに、Dongting 山(洞庭)がある。山頂には金が多く、山麓には銀と鉄が多い。樹木は主に zha 梨、li 梨(棃)、橘、柚。草は主に jian(葌)、芎藭(miwu、蘪蕪、センキュウ)、芍薬、livèche(xiongqiong、芎藭)。帝の二女がここに住まい、つねに大河の淵に遊ぶ。Li 水と Yuan 水の風が Xiao 水と Xiang 水の淵で交わり、九江のあいだにある。彼女らが出入りするときは、かならず旋風と暴雨となる。ここには人の姿をして、両手にそれぞれ蛇をもつ怪しい精霊が多い。また怪しい鳥が多い。
又東南一百八十里,曰暴山,其木多椶柟荊芑竹箭䉋箘,其上多黃金玉,其下多文石鐵,其獸多麋鹿𪊨,就。
東南へ百八十里のところに、Bao 山(暴山)がある。樹木は主に棕櫚、楠、jing と qi の灌木、矢竹、mei(䉋)、jun(箘)。山頂には金と玉が多く、山麓には文石と鉄が多い。獣は主に麋鹿、鹿、ji(𪊨)、jiu という鳶(就)。
又東南二百里,曰即公之山,其上多黃金,其下多㻬琈之玉,其木多柳杻檀桑。有獸焉,其狀如龜,而白身赤首,名曰蛫,是可以禦火。
東南へ二百里のところに、Jigong 山(即公)がある。山頂には金が多く、山麓には tufu の玉が多い。樹木は主に柳、niu、白檀、桑。ここに亀に似て、体が白く、頭が赤い獣がいて、gui(蛫)という。これは火から守る。
又東南一百五十九里,曰堯山,其陰多黃堊,其陽多黃金,其木多荊芑柳檀,其草多藷藇𦬸。
東南へ百五十九里のところに、Yao 山(堯山)がある。北斜面には黄色い白堊が多く、南斜面には金が多い。樹木は主に jing、qi、柳、白檀。草は主に山芋(shuyu、藷藇)と tuo(𦬸)。
又東南一百里,曰江浮之山,其上多銀砥礪,無草木,其獸多豕鹿。
東南へ百里のところに、Jiangfu 山(江浮)がある。山頂には銀と砥石が多い。草木がなく、獣は主に猪と鹿。
又東二百里,曰真陵之山,其上多黃金,其下多玉,其木多穀柞柳杻,其草多榮草。
東へ二百里のところに、Zhenling 山(真陵)がある。山頂には金が多く、山麓には玉が多い。樹木は主に楮、樫、柳、niu。草は主に rongcao(榮草)。
又東南一百二十里,曰陽帝之山,多美銅,其木多檀杻檿楮,其獸多麢麝。
東南へ百二十里のところに、Yangdi 山(陽帝)がある。良質の銅が多く、樹木は主に白檀、niu、山桑(yan、檿)、楮。獣は主に羚羊と麝香鹿(she、麝)。
又南九十里,曰柴桑之山,其上多銀,其下多碧,多汵石赭,其木多柳芑楮桑,其獸多麋鹿,多白蛇飛蛇。
南へ九十里のところに、Chaisang 山(柴桑)がある。山頂には銀が多く、山麓には碧玉、軟らかい石(ganshi、汵石)、赭が多い。樹木は主に柳、qi、楮、桑。獣は主に麋鹿と鹿で、白蛇や飛蛇が多い。
又東二百三十里,曰榮余之山,其上多銅,其下多銀,其木多柳芑,其蟲多怪蛇怪蟲。
東へ二百三十里のところに、Rongyu 山(榮余)がある。山頂には銅が多く、山麓には銀が多い。樹木は主に柳と qi。虫の類は主に蛇と怪しい虫。
凡洞庭山之首,自篇遇之山至于榮余之山,凡十五山,二千八百里。其神狀皆鳥身而龍首。其祠:毛用一雄鷄、一牝豚刉,糈用稌。凡夫夫之山、即公之山、堯山、陽帝之山,皆冢也,其祠:皆肆瘞,祈用酒,毛用少牢,嬰毛一吉玉。洞庭、榮余山,神也,其祠:皆肆瘞,祈酒太牢祠,嬰用圭璧十五,五彩惠之。
総じて、Pianyu 山から Rongyu 山まで、Dongting の山系は十五の山、二千八百里にわたる。その神々はいずれも鳥の体に竜の頭をもつ。その祭祀には、一羽の雄鶏と一頭の牝豚を屠り、聖なる穀物として糯米(もちごめ)をもちいる。Fufu、Jigong、Yao、Yangdi の山はいずれも聖なる丘であり、その祭祀には供物を陳べて埋め、酒と少牢をもって祈り、吉祥の玉を懸ける。Dongting と Rongyu の山には偉大な神々が宿り、その祭祀には供物を陳べて埋め、酒と太牢をもって祈り、五色に飾った十五枚の圭と璧を懸ける。
五蔵山経 総括の跋文(五藏山经)
右中經之山志,大凡百九十七山,二萬一千三百七十一里。
これが中央山経の山々の目録である。総じて百九十七の山、二万一千三百七十一里にわたる。
大凡天下名山五千三百七十,居地,大凡六萬四千五十六里。
天下の名高い山々は総数五千三百七十を数え、あわせて六万四千五十六里の地を占める。
禹曰:天下名山,經五千三百七十山,六萬四千五十六里,居地也。言其五臧,蓋其餘小山甚眾,不足記云。天地之東西二萬八千里,南北二萬六千里,出水之山者八千里,受水者八千里,出銅之山四百六十七,出鐵之山三千六百九十。此天地之所分壤樹穀也,戈矛之所發也,刀鎩之所起也,能者有餘,拙者不足。封於太山,禪於梁父,七十二家,得失之數,皆在此內,是謂國用。
禹が言う。天下の名高い山々を、この経は五千三百七十、六万四千五十六里の地にわたって数え上げる。これを「五蔵(wuzang)」と称する。そのほかの小さな山々はきわめて多いが、記録するに値しない。東西にわたって世界は二万八千里に及び、南北には二万六千里に及ぶ。水を発する山々は八千里を覆い、それを受ける山々も八千里。銅を産する山は四百六十七、鉄を産する山は三千六百九十を数える。ここは天と地が土地を配し、穀物を生じさせる場であり、槍や矛が生まれ、刀や剣が鍛えられる場である。巧みな者はここに豊かさを得、拙い者は乏しさを得る。太山(泰山)を祭り、梁父山に敬意を捧げる。その数七十二家。禍福の勘定はことごとくそこに収まる ── これが国家の富をなすものである。
右《五臧山經》五篇,大凡一萬五千五百三字。
以上が「五蔵山経(Wǔzàng Shānjīng)」の五巻であり、総じて一万五千五百三字である。
注
作品の結び。 このページは 中山经 を締めくくり、それとともに「五蔵山経」(五藏山经:南・西・北・東・中央)の全体を閉じる。最後の四つの一節は総括の跋文である。すなわち中央の山々の総計(百九十七)、天下全体の総計(五千三百七十の山、六万四千五十六里)、大禹に帰される名高い言葉、そして五巻で一万五千五百三字を数えるという末尾の記述である。
帝の二女。 Dongting 山には「帝の二女」が住まう。大湖と Xiang 水の女神であり、後世の伝承では舜の妃である娥皇(Ehuang)と女英(Nüying)に結びつけられる。二匹の蛇をもつ神 Yu'er もまたここを治める。
南斜面/北斜面(其阳 / 其阴)。 阳(yáng)=日の当たる斜面(南)、阴(yīn)=日陰の斜面(北)。
くり返される定型句。「これを食べる/食する者は…」(食之 / 服之)、「これが現れると…」(见则)は前兆を告げる(戦乱 兵、疫病 疫、恐慌 恐、大風 大风)。「その鳴き声は自らの名を告げる」(其鸣自呼)。跋文は特有の儀礼(犠牲を「伏せる」、屠殺、玉の懸垂)を記す。
同定の不確かなもの。 多くの植物、鉱物、生き物の名は確実な対応語をもたない。それらは漢字とともにピンインで転写し、日本語訳は伝統的な注釈(郭璞、郝懿行)に従っている。
漢文は Chinese Text Project(ctext.org)に拠る。翻訳および注:Chine-culture.com。


