中国語の 茶 は、木(チャノキ)も、その葉も、そこから作る飲み物も指します。飲むことは 喝茶 ですが、それ以上に大事なのは淹れること、泡茶 で、文字どおりには「茶を浸す」。ひとつの文化はそこから始まります。この字は草 艹、人 人、木 木 に分けて、「草木のあいだにいる人」と説明されることがよくあります。覚え方としてはよくできていますが、語源ではありません。茶 のもとは 荼 、『詩経』に出てくる苦い草で、唐の頃に一画を取り去って、茶をほかの草と区別したと言われます。それが正確にいつなのかは、専門家のあいだで今も議論があります。古い呼び名のなかには書き言葉に残っているものもあり、たとえば 茗 は、小さな利き茶用の杯 品茗杯 に見られます。
茶だけを論じた最初の書物は 茶经 、『茶経』で、8世紀の後半に 陆羽 が著しました。伝統的に 茶圣 、「茶聖」と呼ばれる人です。書き出しは、このページの例文25にある 茶者,南方之嘉木也、「茶は南方の嘉木なり」です。ただし注意してください。陸羽の茶は今の茶とは似ても似つきません。葉を餅状に固め、それをあぶり、砕き、塩をひとつまみ入れて煮たのです。陸羽はそれで満足していました。ところが、ネギ、ショウガ、ナツメ、ミカンの皮、ハッカなどを加える人たちが飲んでいるのは、彼に言わせれば「溝に捨てる水」でした。手厳しい人です。
宋の時代になると、流行は粉の茶に移ります。黒い碗に入れ、竹の茶筅で泡立てるもので、これが 点茶 です(日本の茶道でも使う言葉ですね)。文人たちは 斗茶 、茶の競い合いで腕を比べ、いちばん白く、いちばん長く消えない泡を立てた者が勝ちました(日本の「闘茶」は産地を当てる遊びで、別物です)。日本の僧、栄西が12世紀の末にこの泡立てる茶を日本に持ち帰り、それが今も抹茶として生きています。このページの 抹茶 がそれです。ところが中国では、この茶は消えてしまいます。1391年、明を建てた洪武帝が、言い伝えによれば農民の苦労を省くため、固めた茶の貢納をやめて葉のままの茶に替えさせ、人々は急須で茶を淹れるようになりました。宜興の 紫砂壶 、紫砂の急須が生まれたのもこの時代です。茶道 「茶の道」という言葉は、中国語にも唐の時代から確かにあります。しかし今の中国人には、何より日本を思わせる言葉です(日本の読者にとっては、まさに自分たちの茶道でしょう)。そこで中国では 茶艺 「茶の芸」のほうが好まれます。1970年代の末に台湾で広まった言葉で、私の記憶違いでなければ、まさに日本の茶道と区別するためでした。
中国人は茶を 六大茶类 、六つの大きな系統に分けます。摘んだあとの葉をどう扱うかによる分類です。绿茶 (緑茶)、白茶 (白茶)、黄茶 (黄茶)、乌龙茶 (烏龍茶、「黒い龍」)、红茶 、そして 黑茶 。ここは日本の読者には楽なところです。红茶 は日本語の紅茶と同じく「赤い茶」で、つまずくのはむしろ、これを black tea、「黒い茶」と呼ぶ西洋人のほうです。中国人は茶液の色を見て、西洋人は葉の色を見ているのです。ただし 黑茶、中国語の「黒い茶」には気をつけてください。まったく別のもので、れんがや円盤の形に押し固め、何年も寝かせる色の濃い茶です。雲南の 普洱茶 、プーアル茶がその代表です。これらの系統すべてについて 发酵 「発酵」と言いますが、実際には葉の酸化です。本当に発酵するのは 黑茶 だけです。
名茶には詩のような名前がついています。杭州の 龙井 は「龍の井戸」で、最上とされるのは 明前茶 、4月初めの清明節の前に摘んだものです。铁观音 は「鉄の観音」、大红袍 は「大きな赤い衣」。どれにも言い伝えがあり、たいていは一つではなく、そして一つとして確かめられません。碧螺春 「春の翡翠の渦巻き」は、はじめ 吓煞人香 、「死ぬほど驚かす香り」と呼ばれていたそうです。太湖に立ち寄った康熙帝がそれを少々品がないと思い、名を改めさせたというのです。いい話です。ラプサン・スーチョン、正山小种 については、「スーチョン」は 小种「小さな品種」の福建なまりですが、「ラプサン」のほうは誰の説も一致しません。
茶は、じつは二つの発音をもって旅をしました。福建の港から海路で出ていった先では、土地の発音 te がオランダ人に運ばれて残りました。英語の tea、ドイツ語の Tee、フランス語の thé です。陸路で、あるいはマカオ経由で伝わった先では cha が残りました。ポルトガル語の chá、ロシア語の чай、トルコ語の çay、アラビア語の shāy です。日本語の「ちゃ」も、もちろんこちらの仲間です。世界のほかの言葉も、だいたいこの二つの家族に分かれます。名前を聞くだけで茶の通った道がわかるわけで、茶马古道 、茶と馬の古い道は、雲南と四川からチベットへと上り、そこで茶のれんがと馬が交換されていました。
いちばん手間をかける淹れ方が、福建と潮州地方の 功夫茶 です。この 功夫 はカンフーと同じ言葉で(当サイトの カンフー のページを参照)、ひとつのことにかける時間、辛抱、そして熟練を指します。工夫茶 とも書き、どちらの表記にも支持者がいます。まず熱湯で杯を温め、温杯 、茶葉をすすぎ、洗茶 (一煎目は飲みません)、それから小さな急須か 盖碗 、蓋つきの碗で、ごく短い抽出を何度もくり返します。茶液はそのあと 公道杯 に移します。文字どおりには「公平の杯」で、これがないと最後に注いだ杯が最初の杯より濃くなってしまうのです。よい烏龍茶は 耐泡 、七煎、八煎にも耐えます。
茶はまず、もてなしのしぐさです。客来敬茶、「客が来れば茶を出す」。注いでくれた人に礼を言うには、曲げた二本の指でテーブルを軽くたたきます。これが 叩指礼 です。お忍びで旅をしていた乾隆帝が供の者たちに茶を注いでやったところ、身分がばれるので平伏もできず、彼らは指で平伏のまねをした、という話があります。微笑ましい話です。本当だという証拠は何もありません。反対に、清の官僚のあいだでは、茶碗を持ち上げて飲まずにいるのは会見の終わりの合図でした。これが 端茶送客 です。そして酒が飲めないときは、以茶代酒 、「酒の代わりに茶で」乾杯します。この言い回しは三国時代にさかのぼり、酒に弱い学者に、主君がこっそり茶を出させたという話から来ています。
茶は婚礼にも入ってきます。昔、婚約の贈り物は 茶礼 と呼ばれました。茶の木は植え替えがきかない、と言われていたからで、嫁は二度と家を替えない、というわけです。植物学者なら異を唱えるでしょうが、象徴のほうは生き残りました。今でも花嫁は夫の両親に茶を差し出します。そして僧にも出番があります。禅僧 赵州 (趙州)は、訪ねてきた人に以前来たことがあるかと尋ね、来たと答えても来ないと答えても、誰にでも同じことを言いました。吃茶去 、「お茶を飲んでいきなさい」(日本では禅語「喫茶去」として知られています)。いらだちの返事なのか、今この時を生きよという誘いなのか。注釈者たちは千年来、言い争っています。
日々の暮らしでも、茶はどこにでもあります。一日じゅうトランプや麻雀をしている成都の 茶馆 があり、それを題にした老舎の戯曲『茶館』があります。広州の 茶楼 とその 早茶 があります(中国と世界の料理 を参照)。会社には 茶水间 、つまり給湯室があり、学会には 茶歇 、休憩があります。下午茶 、アフタヌーンティーのほうは、イギリスから戻ってきたものです。それから 保温杯 、茶葉を入れた保温ボトルがあって、四十歳を過ぎた中国人はみな持ち歩いています(ネットではからかわれていますが、私にそれを笑う資格があるかどうか、自信がありません)。その一方で、広東の 凉茶 には注意してください。茶ではなく、薬草を煎じたものです(治療を受ける を参照)。
言葉にも、茶の入った言い回しが残っています。茶は 开门七件事 、朝、戸を開けたときにそろっていなければならない七つのものの一つです。柴米油盐酱醋茶、薪、米、油、塩、醤、酢、そして茶(ご飯からデザートまで を参照)。粗茶淡饭 「粗末な茶と味の薄い飯」で暮らすとは、つましく暮らすことです。そして 人走茶凉 「人が去れば茶は冷める」は、去ったあとに来る忘却、もう誰も訪ねてこない退職者の身の上を言います。ほかの飲み物、酒やコーヒーやジュースは、次のページで扱います。
例文24は唐の詩人 卢仝 (盧仝)のもので、韓愈の友人でした(唐王朝の詩 を参照)。新茶を送ってくれた友への礼の詩で、彼は碗を数えていきます。一碗喉吻润,两碗破孤闷、「一杯目はのどと唇をうるおし、二杯目は孤独と憂さを破る」。五杯目で骨が軽くなり、六杯目で仙人と通じ合います。七杯目は、もう飲めません。ただ両脇から清らかな風が起こるのを感じるだけです。二杯目でやめておいてください。
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使い方:どの語にもレベルがついています。① は基本、② はよく使うもの、③ は細かいもの。まず ① から始めてください。それだけでも、茶のこと、その淹れ方や習わしについて話すには足ります。▶ のボタンで発音が聞け、漢字をクリックすると筆順が開きます。
茶を飲む
茶、お茶
茶を飲む
茶葉、(葉の)お茶
茶を淹れる、お茶を入れる
湯のみ、ティーカップ
急須、ティーポット
茶館(中国式の喫茶店)
熱いお茶
ティーバッグ
「お茶をどうぞ」(もてなしの言葉)
茶を注ぐ、茶をつぐ
急須一杯のお茶
(飲み物としての)お茶、茶の湯
(熱湯を注いで)茶を淹れる
茶楼(広東式の、階上のある茶館)
茶の系統
緑茶
紅茶(英語では black tea)
花茶(花の香りをつけた茶)
烏龍茶(「黒い龍」)、半発酵茶
ジャスミン茶
プーアル茶(雲南の)
菊花茶(菊の花のお茶)
白茶
黒茶、後発酵の暗色の茶(西洋の black tea とは別物)
新茶、その年の茶
抹茶、粉末の緑茶
餅茶(円盤状に押し固めた茶)
黄茶
六大茶類、茶の六つの系統
磚茶(れんが状の茶)
寝かせた茶;古くなった茶
名茶
龍井茶(「龍の井戸」)、杭州の緑茶
名茶、銘茶
鉄観音(「鉄の観音」)、福建の烏龍茶
高山茶
碧螺春(「春の翡翠の渦巻き」)、太湖の緑茶
大紅袍(「大きな赤い衣」)、武夷山の烏龍茶
毛峰(「うぶ毛の峰」)、黄山の緑茶
キーマン、祁門(安徽省)の紅茶
ラプサン・スーチョン、武夷山の燻製した紅茶
白毫銀針(「銀の針」)、福建の白茶
明前茶(4月初めの清明節の前に摘んだ茶)
茶道具
茶器、茶道具
(飲み物用の)グラス、コップ
保温ボトル、保温マグ
茶盤、茶を淹れるための盆
蓋碗(ガイワン)、蓋つきの碗
宜興の紫砂の急須(「紫の砂」)
茶筒、茶缶
やかん、湯沸かし
公道杯、茶液を移して均等に分ける器
小さな利き茶用の杯
茶こし
茶を淹れるときの布巾
茶ペット(「茶の愛玩物」)、茶をかけてやる土の置物
茶渋(湯のみや急須の)
茶托(湯のみの受け皿)
茶を淹れる
湯を沸かす
濃いお茶
湯の温度
湯を注いで淹れる、抽出する
茶葉をすすぐ(「茶を洗う」)
茶液、抽出した茶
湯を足す
杯を温める(熱湯をかけて)
茶液を注ぎ出す(急須から)
何煎も淹れられる
急須に茶葉を入れる
茶を味わう
茶を味わう、利き茶をする
茶の香り
渇きをいやす
眠気を覚ます、元気づける
さわやかで上品な香り
苦くて渋い
茶の色;薄い褐色、(ガラスの)スモーク
(ある飲み物に)なじめない、飲みなれない
口に戻ってくる甘み
まろやかでこくがある(味)
脂っこさを消す(重い食事のあとで)
残り香、あとに残る香り
作法と儀礼
茶の道、茶の芸(今は日本の茶道を思わせる語)
(敬意をこめて)茶を差し出す
酒の代わりに茶で(乾杯する)
茶芸、茶を淹れてもてなす技
功夫茶、小さな急須で何煎も丁寧に淹れる茶
茶芸師(職業)
客が来れば茶を出す
指でテーブルを軽くたたいて礼を言う
茶の泡の競い合い(宋代。日本の闘茶とは別)
点茶、粉の茶を泡立てたもの(宋代)
茶碗を持ち上げて客に帰りを促す
「お茶を飲んでいきなさい」(禅僧趙州の言葉、喫茶去)
結納の品(茶を含む)
茶の木から茶葉店まで
お茶屋、茶葉店
茶の木、チャノキ
茶園、茶畑
茶を摘む
茶農家
産地
春の茶、春摘みの茶
発酵(茶の場合は酸化のこと)
やわらかい新芽
茶葉を釜で炒る(葉の変化を止めるため)
茶の問屋、茶荘
茶馬古道、茶と馬の古い交易路
「茶聖」(陸羽)
言い回しの中の茶
「茶のあと、食事のあと」:暇なとき、世間話の種
「粗末な茶と味の薄い飯」:質素でつましい暮らし
「人が去れば茶は冷める」:去った人はすぐに忘れられる
「茶も飯も思わない」:食事ものどを通らない
「急須でゆでたギョーザ、口はあるのに出てこない」:わかっているのに言葉にできない
「茶が来れば手を伸ばし、飯が来れば口を開ける」:何でも人にやってもらう
「戸を開けての七つのこと」:暮らしに欠かせないもの
「一杯の水で車一台分の燃える薪を消す」:焼け石に水
茶を通じて友をつくる
日常語の中の茶
アフタヌーンティー、午後のお茶
茶菓子、お茶うけ
茶話会、(学校や会社の)ささやかな集まり
給湯室(職場の)
(会議の)休憩、ティーブレイク
茶系の飲み物、ティードリンク
茶飲み友だち、茶好きの仲間
お茶だけ(茶菓子なし)
茶館の常連
お茶代;チップ
例文
お茶にする、それともコーヒー?
さあ、お茶を一杯どうぞ。
多くの中国人は毎日緑茶を飲みます。
これは今年のお茶だよ、飲んでみて。
夜に濃いお茶を飲んじゃだめだよ、眠れなくなるから。
私はお湯を沸かすから、お茶を淹れて。
週末はよく茶館へ行って、お茶を飲みながらおしゃべりします。
イギリス人はアフタヌーンティーが好きです。
中国人が「紅茶」と呼ぶものを、西洋では「黒い茶」と呼びます。
緑茶を淹れるときは、お湯が熱すぎてはいけません。
一煎目は茶葉をすすぐためのもので、ふつうは飲みません。
よい烏龍茶は何煎も淹れられます。七煎、八煎しても、まだ味があります。
お客さんが来ると、主人はまずお茶を出します。
私はお酒が飲めないので、お茶で皆さんに乾杯します。
お茶を注いでもらったら、指で軽くテーブルをたたけばいいのです。
この宜興の急須は祖父から譲り受けたものです。
このお茶は少し苦いけれど、飲んだあと口に甘みが戻ってきます。
この件はすっかり世間話の種になった。
プーアル茶は寝かせるほど香りがよくなります。何十年ものの餅茶もあります。
清明節の前に摘んだお茶は少ないので、値段が高いのです。
退職してから、古い友人たちも訪ねてこなくなった。去る者は日々に疎し。
毎朝、戸を開けたらそろっていなければならない七つのもの:薪、米、油、塩、醤、酢、茶。
彼は何でもわかっているのに、それを言葉にできない。急須でゆでたギョーザだ。
一杯目はのどと唇をうるおし、二杯目は孤独と憂さを破る。
茶は南方の嘉木なり。


